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2012.02.21

多賀城チームの歩み

「俺の話し方は聞き取りづらいかもしんない。多賀城の訛りなんだよ。程よくガラが悪いというか(笑)。でもそんな多賀城の空気が俺には合ってて心地良いんだよね」

優しい笑顔で話すのは、復興応援団多賀城地域プログラムマネージャーの橋本直樹さん。
橋本さんは昨年10月に復興応援団にやってきました。
出身は東京ですが、仕事の関係で10年ほど仙台に住んでいたことがあり、多賀城には馴染みがあったそう。
「多賀城には知り合いや、かつてお世話になった人がたくさんいる。震災が起こって心配だった」と話す橋本さんは、すっかり“多賀城の人”です。
橋本さんは現在、多賀城地域でのプロジェクトを担当し、日々仮設住宅を走り回っています。

復興応援団はもともと、つなぷろ(被災者とNPOをつないで支える合同プロジェクト)の多賀城チームの活動を基にして立ち上げられました。その活動を発展させ、多賀城市のまちのなかで長く続いていくような「支え合いのネットワーク」をつくることを目標にしているのが、復興応援団多賀城チームです。
チームは橋本さんを中心に、小畑直也さん、藤原拓海さんの3人。

中でも橋本さんは、日々仮設住宅や自治会、社会福祉協議会、各仮設住宅の連絡調整会議に足を運び、現場の人と顔を合わせます。仮設で暮らす方々の見守りのため、実際に住民の方からお話を聞き、周辺の商店、施設をまわって、住民の生活の微妙な変化やニーズを感じ取ります。そしてそれを、各仮設の自治を担当している社会福祉協議会や、その仮設の自治に関わる全ての団体が集まる連絡調整会議の中で報告しています。
「最初の頃は入り込んでいくのは大変だった。俺は人見知りだし。でも、住民の方と支援者をつなげるためにはそんなことは言ってられない。俺ができることは、住民や支援者、外部の団体をつなげること。それが役割だと思ってる。例えば、(仮設住宅周辺の)たばこ屋で、最近住民のたばこを買う量が増えたという話を聞いたら、ストレスが大きくなってるんじゃないかって報告する。近くのスポーツ店が仮設住宅内でイベントをやりたいと言っていれば、直接社会福祉協議会につなげる」
最近では、高橋公園仮設仮設住宅の役員会定例会の中で、「橋本さんの見回り活動には本当に助かっている」と声をかけられたそう。
1人1人に寄り添い、人と人をつなげる橋本さんの活動は、確実に仮設住宅の支えになっていると感じました。

橋本さんの活動によって、多賀城地域、各仮設住宅の中の人達と復興応援団のつながりが生まれています。
多賀城チームはこのつながりを活かして、今後3つのプロジェクトを進めていきます。

(多賀城チーム会議をすすめる橋本さん、小畑さん、藤原さん)

1つ目は、仮設内見守りネットワークの構築です。
「お世話人」と呼ばれる仮設内の人間関係をよく把握している住民(女性)や、
仮設周辺の商店や施設、仮設に出入りする移動販売組合、NPOや企業などの支援者からの住民の情報を集約し、
それに対して必要な支援を市や社会福祉協議会、仮設住宅の管理業務を行う共立メンテナンスに要請したり、
お世話人や支援者にイベント等でのアイディアを提案することが、今後目指す復興応援団の役割です。
これを通して住民を孤立させない支え合いの仕組み「見守りネットワーク」をつくろうとしています。
まずは、「つなプロ」時代から多賀城に関わってきた藤原さんが周辺の商店、施設を訪問し、仮設住民の情報を聞き出したり、今後の協力をお願いしたりしていきます。

2つ目は、仮設住宅内でのイベントの開催。
「支え合いマップ作り」では、各仮設の自治会やお世話人の方を中心に、団地内の人間関係を書き込んだマップを作成します。例えば、「この人とあそこの人は仲が良くて、良くお茶会をしている」といった具合です。
和気あいあいとした雰囲気でマップを作るなかで、仮設を自治する側が住民の関係や現状を“見える化する”ことで把握し、支援者の意識付けをすることが目的です。
もう一つのイベントはセミナーの開催。
阪神淡路大震災以降、仮設住宅の暮らしサポートを続けてきた石東直子さんをおよびして、セミナーを開催する予定です。

3つ目は、移動販売プロジェクト。
仮設住宅内でおでんの移動販売を行うことで、住民の方にコミュニケーションの場を提供し、同時に、より住民の方からお話を聞く機会をつくるためのプロジェクトです。
このプロジェクトには学生が参加し、住民の方とおでんの販売を通して交流します。普段仮設住宅の中に閉じこもりがちの方にも、若い世代との交流をきっかけに外に出てきてもらい、その住民を各仮設の自治組織とつなげることがねらいです。
移動販売の知識など全くない復興応援団ですが、メンバーは試行錯誤を重ねながら準備をすすめています。

多賀城市には、震災以前の居住地域がバラバラの人たちが入居している仮設住宅が多くあります。
入居者が孤立し、自殺や孤独死をしてしまわないよう、地域ぐるみのコミュニティ形成を目指していきます。
そして、支え合いの仕組みがまちに残り、震災前以上に支え合う力が増した、いきいきとした多賀城になるため、
復興応援団多賀城チームは、住民の皆さん、現場の方に寄り添いながら活動を続けていきます。

(下澤大祐)

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