多賀城市から仮設住宅の管理業務を委託されている
共立メンテナンスの現場スタッフを対象とした研修会が開かれました。
都市計画プランナーの石東直子さんを講師としてお迎えし、
仮設住宅団地での自治コミュニティ形成の重要性についてご教授頂きました。
石東さんは阪神大震災の経験を踏まえ、東日本大震災・暮らしサポート隊を結成し、
東北から関西に避難されてきた方々同士の集いの場をセッティングしたり、
宮城県亘理町の仮設住宅団地の自治コミュニティづくりをサポートするなど精力的に活動なさっています。
「(共立メンテナンス現場スタッフに向けて)あなた達は、入居者の人たちから何て呼ばれとるん?
共立さん?支援員さん?それとも見守り員さん?」
研修会は石東さんの鋭い問いかけから始まりました。
“入居者のみなさんと一緒に活動している、入居者のみなさんの側に立った支援員さん”
というイメージが望ましいはずなのに、
会社の名前をそのまま用いていることは、
入居者に「管理されている」という誤解を与えかねないとの指摘でした。
「あなた達は、行政や会社と入居者の間で板挟みになっていて、
本当に苦しい立場だと思うけれど、
誰に寄り添うのかと言ったら、入居者に寄り添わなあかん。」
この言葉によって参加者の顔つきが変わりました。
阪神大震災では、仮設住宅解消までの5年間で約250人の方が孤独死で亡くなりましたが、
その3分の2が50-60代男性という、本来ならば働き盛りの層。
男性は、生活が会社と家族内に限られがちでコミュニティづくりが苦手だからだそうです。
「仮設住宅に住んでいる人の暮らしも、仮の人生ではなく、
かけがえのない貴重な人生の1ページなんです。」
この言葉にはっとさせられたのは私だけではないはず。
仮設住宅退出までの数年間の仮設暮らしは、
確かに周囲から見れば短いものかもしれません。
しかし、入居者の方にとって大事な人生の一部分となります。
仮設入居は望んだものではないけれど、その暮らしに満足してもらえる、
仮設生活で何かプラスのことを得られたと感じられる、
そんな場を作りたいという強い意志の下、石東さんは奮闘されています。
その一例として、
棟ごとに世帯主と連絡先が分かる名簿カード『住まいるカード』作成があります。
個人情報保護法の観点から行政が公表できない名簿カードを入居者に手作りしてもらうことで、
町やボランティア任せではなく、
入居者が自分たちで生活を快適にしようと思う自治を育む第一歩となり、
名前を知り、呼び合える関係がつくられ孤独死防止につながります。
参加者と石東さんによる質疑応答の時間は非常に活発なものとなりました。
日頃現場スタッフが迷っていた問題に対して、石東さんが一つずつ丁寧に答えていきます。
最初はためらいがちであったスタッフも、徐々に議論に参加するようになり、
講演後のフィードバックでは参加者一人一人から改善策について具体的な案が提出されました。
必要性が十分に感じられていても行政ではどうしても手の届きにくい分野で、
今回の研修会のように、
行政と柔軟に連携・協働して入居者の方が幸せに過ごせる場を作り出したいというのが、
私達復興応援団の願いです。
主役は、行政でも管理業者でもなく、もちろん私達でもなく
仮設住宅で過ごしている入居者の方々なのですから。
(森 夕海)